キョウアイ―狂愛―




家族とか、恋人とか、そう言う事じゃない……。







サイファにはあたししかいない。

あたししかいないんだ。






サイファの綺麗な瞳にはあたし以外、誰も映っていない。




きっとあたしを取られたら全てが終わりだと思っていて、



だから恐ろしい程、相手を憎むんだ。

傷つけて、八つ裂きにして、真っ赤な血で染め上げても、足りないくらい憎んで、



それが当然だと思ってる。







彼の中で世界の線引きは明確だ。



あたしと、それ以外。







「…………クレア……?」




小さく震えるクレアに、漸く手を放し、美しく輝く瞳で覗き込む。






自分を求める異形の血縁。




向けられた純粋な切望を、



美しいと思っているのか、恐ろしいと思っているのか


クレアは自分でも分からなかった。




ただ、心に響くものがあった。強く胸を打たれた。






「ただいま…………」




振り絞るようにそう言ったクレアの頬に、温かい涙が流れ落ちた。





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