キョウアイ―狂愛―








こんな純粋な思いに触れなければよかった。







冷酷な悪魔のままならよかったのに。







決心を固めようとした今になって、大きく感情を揺さぶられた。







自分から全てを奪った悪魔。
全てを奪ってまで、自分を手に入れたかった悪魔。


冷淡で罪深く
純粋で哀しい



与えるのは裁きか、
慈しみか。



復讐か許容か。








何もかもがごちゃ混ぜに、混迷の中、夕陽は全てを包んで沈んだ。






「どうして泣いてるの?
……クレア」




薄暗い丘の上での異形の目がきらめく。



迷宮に足を踏み入れたクレアの頬に流れる涙を、サイファは唇で優しく掬った。










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