キョウアイ―狂愛―
侵入者をジリジリと追い詰めるサイファの視界に、立ち上る煙が入った。
中庭の狭い範囲で器用に逃げ回る侵入者、シアンを追いながらも外を気にする。
「……きゃっ火事よ!」
「サイファ様、火が……」
見上げると四方から煙が上がり、屋敷のいたる所で火があがっているようだ。
「火矢だ!火矢が投げ込まれている!」
サイファはシアンを見据えたまま、そんな声が上がるのを聞いた。
(……アルザスめ!)
いづれはこんな日も来るかと思っていた。
アルザスのような男が情けなど持ち合わせるはずもない。
(それにしても、……今を狙うか)
早くクレアを連れて逃げなければ……。
しかし、シアンは切迫していてあきらめそうな様子もない。
「……クレア……クレア」
半分狂ったようにクレアの名をブツブツと呼んで二階を気にしている。
パチパチと火に草木が燃やされ弾けるような音が聞こえ始めた。
煙は一層濃くなりきな臭い臭いが立ち込める。
(早く決着を……)
サイファは立ち止まり構え直した。