キョウアイ―狂愛―




火に焼けた階段の手すりが、クレアの圧力で崩れ落ちる。



階下はもはや火の海で、屋敷が崩れるのも時間の問題であろう。




クレアはそれでもゆっくりと階段を注意深く降りてゆく。









「クレア、ほら、血をお飲み」



出来損ないの片割れに、何故かサイファは愛を注いだ。


優れた後継者故の優越感からか……と、推察した事もあったが、

それにしても自分の命も惜しみないくらいの愛をサイファから感じていた。




いつもサイファがどこからか持ってくるまだ温かい生血に罪悪感を覚えつつ、欲に任せ喉を潤した。






誰からも必要とされず、産まれた時分より死の予感に怯え続ける我を、サイファだけが必要だと。


他の何より、我だけが必要だと―――







「次期当主ならば不必要な片割れを始末せよ」



お父様がサイファに命ずる。

あの方は、我の名など呼んだ事もなく。




同じ夕げの席につく我の前でその命(めい)は落とされた。


お父様以下、親族の冷徹な瞳が我に向く。





「明日を持って処刑の日とせよ」



お父様はサイファの目に浮かぶ凍りつくような憎悪に気づかない。



「滞りなく全て終わったあかつきには、サイファ、お前を正式にリドル家の次期当主として認知しよう」





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