キョウアイ―狂愛―
「クレア、クレア一緒に逃げよう」
夕げの終わり、花に囲まれた中庭でサイファに抱きすくめられる。
「……離せ」
……もう、ずいぶん前よりサイファを無下にしている。
消え行く者と一族を統べる者。
等しくあるはずもない。
「何故!?君はこんな時でさえ僕を避けるのか?」
「…………」
「クレア!何とか言え。
分かっているだろう?
君を愛している!
何よりも!誰よりも、愛している!」
「…………」
……知っている……
知っているよ。サイファ。
「君を失えば……生きてなどいけない」
サイファの濡れた瞳は、すがるように我を映した。
「……我は……、」
瞳の中に疎ましい自分が映し出される。
「……我は、お前とは逃げたりはせぬ。
これは……運命」
サイファの最後の望みを断ち切った。
「当主であるお父様がお取り決めなされた事。
我は運命を受け入れる、お前は役目を果たせ」
「役目って……!クレア、……クレア!」
サイファの痛ましい声を背に浴び自室へ帰った。
けれど、翌日は我の処刑の日とはならなかった。
屋敷に火を放ったサイファは、我の処刑に同意した者、全てを切り捨てた。