キョウアイ―狂愛―




クレアを抱きしめ一度周りの景色に目をやる。


中庭はすっかり炎に包まれていた。



クレアも同じ景色を見ていた。


「花がすっかり焼けてしまった。サイファ、お前に似た白く清いカトレア……」





サイファの口元に笑みが浮かぶ。


「いいんだ。僕は燃えるような赤が好きだ。君に映える」




美しい。


なんて美しいんだろう……この世は。



全ては   君が在るから。






「クレア、また僕と一緒にこの世に生まれてくれる?」





銃は抱きしめたクレアの背に当てられた。





「お前と一緒でなければ嫌だ……」




サイファは目を閉じクレアの額にそっと口づけした。



愛おしい僕の半身……






「愛している」








踊るような炎の中、一発の銃声が鳴り響いた。



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