キョウアイ―狂愛―
するとここにいるのは盗賊とでもいったところか……。
クレアが思いながら周囲を見渡すと、少し茂みを行った所に赤毛がチラッと見えた。
(『お頭』だしね)
『盗賊』なんて、物語の世界みたいだわ。
クレアは不思議と恐怖を感じなかった。
(サイファのあの屋敷にいるよりは、ずっとまし)
近くまで寄ると、岩場に座り葉巻を加えていた赤毛が振り返る。
「おー……いいねぇ」
元々細い爬虫類のような目を更に細めながら、クレアの足に視線を這わせた。
口からは煙りがゆっくり吐き出される。
クレアは一瞬躊躇したが、すぐに口を開いた。
「あの、……お頭」
「ジキル」
が、すぐに遮られた。
「オレは“ジキル”っつーの。
お前は子分じゃねーんだから名前で呼べよ?」
言いながらジキルは岩場を降り、クレアの目の前にやって来た。
近くで見ると引き締まってはいるが、相当ガタイがいい。