キョウアイ―狂愛―
白い服の女は抱えていた何かを横に捨てた。
ドサッ
と大きな音を立て、地面に叩きつけられた物は人間だった。
(……4、)
女は自分から目を離さない。
白い服の前部分は血がべっとりついている。
そして女の口の周りにも。
(オレぁ、5人目か?)
女はジキルの思いに触れたかのように、
「お前も我に喰われたいか?」
手で口の周りの血を拭い、それを赤い舌ですくった。
依然、ジキルを捕らえたままの瞳は煌めき、妖艶な笑みを浮かべる。
その様に、
ジキルは心臓を握られたように硬直した。
半々の恐怖と好奇心。
そして女の人外の美しさに心を奪われた。
「オレを喰いたいのか?」
少しでも話をしたく、質問を返してみただけだったが、案外それもいいと思っている自分に驚く。