キョウアイ―狂愛―




「……血は足りた。
だが、お前が向かってくるなら容赦なく奪おうぞ。

我には吸収されぬ故、お前は無駄死にだ。
勿体ない」




にぃっと笑う女には、情など欠片も無さそうだ。



だが、いい。




「無駄死には勘弁願いてぇなあ」



ジキルの首筋に冷や汗が流れた。




(これが巷を騒がせているヴァンパイアってヤツか……?)


ヴァンパイアがこんなに妖艶な化け物だとは思わなかった。


そして、身体の内から震えがくるような迫力。



盗賊の頭ともあろうジキルでも本能が察知する恐怖を抑える事は出来なかった。







「ならば即刻ここから去れ。さすれば、見逃してやろう」





(………?)



ジキルは微かな違和感を感じた。


この女は実は何かを焦っていて、自分を脅して立ち退かせようとしている?







「………なぁ、人間の血ってうめぇの?」



試しにわざと検討違いな質問をしてみた。



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