キョウアイ―狂愛―
「……ああ、旨い。人間の生き血は、温かく、甘く、我の身体の一部となる……。
……どうやらお前もそうなりたいようだな?」
女の口が開き中から尖った牙が光る。
瞬間、ジキルは飛びかかってきた女の凄まじい力に押し倒された。
「!?」
それでも今まで幾多の危機を乗りきってきたジキル。
女の両腕を掴んでいた。
更に女は牙をむき、ジキルの首に食らいつこうとする。
(そうか……、首から血を吸うんだよな……こいつら)
しかし、細い腕だ。
とてもこんな並外れた力を持ってるとは思えない。
肌は透けるように白く、長い髪がジキルに覆い被さり、血の匂いとは別になんとも言えぬよい香りが漂う。
顔はまだ微かにあどけなさを含んでいる。
「あ〜〜〜ダメだ!」
ジキルは緊迫した場面からは場違いな抜けた声を出した。
女の力が一瞬弱まり、戸惑いをみせた。
「オレ、お前が欲しいんだけど!」
自分の命を奪おうとしている化け物に対し、ジキルはとんでもない告白をした。