キョウアイ―狂愛―




「……何をたわけた事を……!」



ふざけるな、と異形の女は怒りをあらわにする。





自分が喰われるかといった場面でそんな告白をする馬鹿を見たことがない。







「嘘じゃねぇ」




意志の強い瞳が間近で女を捕らえた。





「…………」


緊迫した場面でこそ本性がわかる。
捕食者と獲物、そんな関係ながら、この瞬間、女は誰よりジキルを理解した。





「半端なく強く……、恐ろしく美しい……、こんな女見たことねぇ」




―――ただの身の程をわきまえぬ馬鹿だと思っていたが……、確かに初めからこの男には戦意がなかった。






「このままお前に血を捧げてもよいが、……オレと一緒にこねぇか?」



ジキルの誘いにヴァンパイアはしばし間を置いた。

しかし、やはり焦っていたようで結論は早かった。




「……時間の限界だ。
本意ではないが、殺すのも忍びない……。
貴様に預けよう」




「マジで!?」




< 80 / 237 >

この作品をシェア

pagetop