ココア
 

「ねぇねぇ、樹里。
ココア入れたから飲もぉ
冷めちゃうよ?」


ココア?
コーヒーじゃなくて?

まだスッキリしない体を
無理矢理動かす。


「樹里、寝過ぎ。」 

「寝貯めしたまでよ。」

あくびをしながら扉を開けた
いつものダイニングは、
甘い香りが充満してる。

「胸やけしそうでしょ。
私、既にヤバめ。」

彼女が苦笑する。


「なあ、これって?」

テーブルの上の、ワイヤーとビーズで編まれた小さな籠

真月のチョイスらしき、
甘すぎないデザインのそれには、
ダイスサイズの
ラッピングされたモノが
いくつも入っていて。


もしぞや・・・?

もしぞやっ・・・!!


「バレンタイン・・ですよぉ。」

「!!」

思わず、にやける口元を
掌で覆いかくす。



「も、もしかしてっ!
啓太に、何かきいたっ?!」

「ん?別に?」

何かしらは、聞いたんだろう
彼女は、笑みを浮かべる。

「たまには、こーゆーの、
参加すんのも楽しいね。」


ただ、それだけいって。


『大好き』って
いってくれたよね。
俺もだし。


お互い、若干、照れながらも

ほんと、
俺にとっては、
最高のバレンタイン。


あの『大好き』は
何にも、勝っていて。


二人で、苦手目な
チョコをついばむ。


「案外、いける。」
「ビターだもん」

ポイッと、放りこんだ
チョコレートは、大人向きで。


ちょっと照れた
真月が可愛いくて


「来年も
・・・よろしく。」


単純に、そんな風に
零した台詞は。

 

「樹里が、同じで
いてくれたらね。」


そんな言葉に繋がれて。



じゃあ、続くに
決まってる。



だって、
言うまでも
ないもん。




一番大事な人だって。






でも、年に一度、あえて
再確認する日にするのも
悪くないかもしれないな。




今年から
そういう日に
しちまうかな。









     FIN
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