My fair Lady~マイフェアレディ~
「おじさんはどうして、こんな所にいるの?」

聞きたい事は色々にあったが、まずはソフトな所から聞いてみた。男は胡座を掻いた姿勢で俺の質問に答えた。

「逃げてるのさ…」

「逃げてる?」


「悪魔からな」


俺はポカンッと口を開けた。


「あく…ま?」

「そうだ。恐ろしい悪魔さ。人を喰うのさ」

俺は彼に読んでもらった本に書いてある物語を思い出す。まさか、そんなの…。

「嘘でもデタラメでもない。あいつは…あいつはバケモノさ…」

男の体がまたプルプルと震えだした。そして、もげた腕を擦る。

「それ…」

「そうさ、あいつに持ってかれた…」

俺は血の気が引いていくのを感じた。俺の緩い涙腺は今にも壊れてしまいそうだ。

「パパン…!!」

俺は頭を抱えた。怖い…怖い…。そんな得体の知れない生き物が存在するなんて…考えたくも無いのに…!!



縮こまる俺を見て、男はまた呟くように言った。

「そんなに怯える事はないさ…襲われる奴は決まってんだ…」

「え、どういう…」


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