My fair Lady~マイフェアレディ~
「……ロード……お前、まさか……自分の母親を……」
「………ああ」
ネオードの頭に叩き付けられたような激しいショックが巡った。
「テメェッ……!!」
ガッと胸倉を掴む。だが、やはりロードは母の墓を見るばかり。ネオードはその顔を横から覗き込むと……息を呑んだ。
無表情のその顔に。途切れる事なく流れる涙。
ネオードは自分の母、フィレネの言葉を思い出していた。
『涙は無意味に流れるものじゃない。人間の激しい感情を抑えるために流れるの。そうでなければ人間の頭はパンクして壊れてしまうから……』
もし、ロードがあの料理を作らなかったら、自分はどうなっていたのだろうか。
「ロード……お前…こんなに泣いて…ゴメン……」
決して自分の前では泣かなかったのに。
ネオードが俯いて言うとロードは平然とした口調で言った。
「泣いている…?まさかお前の母親じゃあるまいし」
ハッとしてネオードは顔を上げた。その無表情の顔を両手で包んで無理矢理顔を合わせる。
まるで感情の無い漆黒の瞳。涙で光るその瞳に映るのは同じく涙を流す自分。
「お前、気付いてないのか!?自分が泣いている事に気付いてないのか……?!」
「意味わかんねーぞ」
「ああ……そんな……!!」
ロードはどんな気持ちで母を切り刻んだのか。
どんな気持ちで。母が死んでいくのを見ていったのだろうか。
どんな気持ちで母の身柄が肉片になっていくのを見ていたのだろうか。
母の肉を美味そうに食べる幼馴染をどんな思いで……!!