ICE
ロンドンを目指す間、エリーナは考えていた。
コンパスのことも、この悪天候のことも。
子供たちには辛い道のりだった。
しかしこれから更に過酷になることは、想像に難くない。
ここで甘えを許すわけには行かなかった。
子供たちもそれを悟り、必死についてきた。
ロンドンも跡形なく消えていた。
電気社会は機能麻痺に陥っている。
そもそも人間が見当たらない。
ここまで来る間にエリーナは一つの仮説を立てていた。
磁極が逆転したのではないかと……。
逆磁極期ならコンパスの件は簡単に説明がつく。
それに異常気象を引き起こす可能性も十分にありうる。
しかしこの事は、他の八人には伝えなかった。
確信がなかったし、もしそうなら、アフリカも楽園ではないからだ。