ICE

ジェフは更に続けた。

「ここアフリカももうすぐ終わる」

彼はべらべら話した。

すべてを仕向けたのは自分であると……。

エリーナは信じたくなかった。

左遷の原因となった横領も、大半を貧しい人々への募金にしていたジェフを知っていたから。

あの頃のジェフの夢は、平等な社会だった。

社会主義とかそういうことではなく、頑張ったもの、才能あるものが報われ、頑張らない、怠惰な人間が報われることのない社会。

そんな理想を笑顔で語ったジェフはいなくなってしまった。

ジェフはエリーナに一緒に宇宙に逃げないかと誘った。

地球は終わりだ。早く見切りをつけた方がいい。

その言葉を彼女は信じられなかった。

むしろ怖かった。

もう昔のジェフではないのね。

言い訳のようにそう言って、エリーナは腰に手を回した。

「君に、僕は撃てないよ」
背中を向け、そう言ったジェフにエリーナは言った。

「昔のあなたならね」

サイレンサーをつけた銃で彼の心臓を撃ち抜いた。

エリーナはそのまま部屋を出て姿を消した。

サヨナラ

そう言い残して……。
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