悲愴と憎悪の人喰い屋敷
来訪者
螺旋階段で二階に上がると、五十メートル程の廊下が続き左右に数室の扉があった。
床には赤い絨毯が敷かれていて洋館という雰囲気を一層思わせる。

「!」

まただ…何か潜んでいるという感覚が俺を襲う。
今にも廊下の向こう側から大きな獣が走って来るような…。
うぅ、自分で思って怖くなってしまった。
三浦も不快感を感じているのだろうかと隣を見ると、予想通りというべきか眉を寄せて廊下の先を黙って見つめている。

「こんなに部屋があると迷うよな。俺の隣にするか?」

樋口の申し出に頷こうとした時、俺は一番手前の部屋が妙に気になり吸い寄せられる様に扉のノブへと手をかけていた。

「その部屋が良いのか?胱矢」

「え…?」

そう樋口に言われて、俺は自分の取った行動に今気付く。
今さら否定する訳にもいかず俺は苦笑して頷いた。

「あ〜…か、階段に近いから効率が良いかなと思ってさ」

「そっか。でも夜中に部屋を出る時は気をつけろよ?」

適当な事を言ったにも関わらず、樋口は素直に納得してくれる。
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