悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「とりあえず、荷物を置いてきたらどうだ?」

窓際の椅子に座り、本から目を離さずに言ったのは副部長の片山 学。
成績は大学で上位に入る程の実力で、将来は医師を目指しているらしい。
何故、医師を目指している奴が文学部にいるのだろうか?
疑問に思って聞いてみたら『特に意味はない』と返ってきた。
何というか人を見下した様な口調とか質問した時の小馬鹿にした様な溜息とか、いちいちムカつくんだよな。
絶対に精神病院の医師には向いていない。

「そうします…三浦、行くぞ」

「あ、はい」

三浦は大きく頷き、俺の後から着いて来る。
そんな俺達の背中に部長は一言大きな声で言う。

「夕食は先に済ませたからな。お前達は調理場で何か作って食べろよ」

おいおい、普通は部員全員が揃うまで夕食は待つだろ?
部長の辞書に《思いやり》という言葉はないらしい。
俺は無慈悲な部長に何も言わず一礼して扉を閉めた。


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