悲愴と憎悪の人喰い屋敷
八方塞がりだなとハンドルに顎を乗せ落胆していると、サイドミラーに車のライトが映る。
その瞬間、俺は救いを求めるかの様に車のテールランプを点滅させた。
そのサインに気が付いた運転手は、静かに横へと停車する。

「もしかして、北川先輩ですか?」

窓を開けて顔を覗かせると、停車した車の運転席から見知った声が聞こえた。

「三浦?」

俺が半信半疑で聞くと、相手は車内のライトを点ける。
ハッキリ顔が見えた時に俺は確信した。
確か今年サークルに入部した大学一年の三浦 圭。
誰に対しても物怖じせず礼儀正しい青年で、背丈が俺の肩までしかなく初対面の時は中学生かと思った。
何でも母親がイギリス人だそうで、日本人にしては髪も目も色素が薄い。
童顔な事もあり、女性達が母性本能をくすぐられると騒いでいたっけ。

「どうしたんですか?」

大きな眼を更に大きくして三浦は心配そうに聞く。

「車がエンストして動かないんだ」

「じゃあ、僕の車で一緒に行きませんか?」

「え?良いのか?」

「全然、構いませんよ」

三浦はニッコリ微笑み、俺を乗せるため助手席の荷物を片付ける。
雨が降りしきる中、俺は荷物を片手に持ち車に鍵をかけて三浦の車へと乗り込む。

「狭くて御免なさい」

「いや、構わないさ」

三浦の車は軽自動車で普通は男二人が乗ると何となく狭く感じるが、三浦が小柄な体格なため窮屈だとは思わなかった。

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