悲愴と憎悪の人喰い屋敷
恐怖の支配者
「くっ…」

ちくしょう!助けられた筈だったのに!
またしても屋敷の思い通りの結果になり俺は悔しさで歯噛みする。
その時、後ろで金属の音がしたと察して瞬時に俺は立ち上がった。同時に包丁が右腕を掠めて血が服に滲む。
そうだった。
落ち込んでる場合じゃない。
この場所はまだ危険地帯なんだ。
何とか隙をついて逃げ出さなければと思考したとき、

【クックックッ…美味い血だ…】

「!?」

身の毛もよだつ声とは、まさにこの声じゃないかと思う程の濁声が頭に響く。
そう、耳で聞いているんじゃなく頭に響いてくる声なんだ。
明らかに人間の声じゃない。
別館で襲ってきた声とも何かが違う。

【中で…じっくり味わうか……それとも…ここで血祭りにするか…】

そう『声』が言った瞬間、無数の包丁やフォークが浮かび俺を囲む。
ま、まさか『声』の主は屋敷を支配している奴なのか?
俺は半ば理解して傷口を押さえ扉の方へと後退した。
相手が望月の苦手だと言っていた支配者『悪魔』なら、すぐに来れないのも理解できる。
得体の知れない力で、この場所を封鎖している可能性大だ。
どうすれば良い?
屋敷に囚われた人間達を助ける手段が見つかったんだ。
こんなところで殺されて堪るかよ!
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