悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「え?」

ふと誰かに呼ばれた気がして俺は辺りを見渡す。
その瞬間、後ろの壁にブレスレットをしている手で触れろと言われている気がして自分の直感を信じ掌を当てた。

「とっ!」

ブレスレットが光ったと思った途端、水の中に手を入れたような感覚になり俺は背中から転倒する。

【ちっ…余計な真似を…】

『声』がそう言ったのを聞いた後、俺は背中に衝撃を受けた。

「…っ!」

「良かった。やっぱり能力は本物ですね」

「も、望月?」

目の前に上から見下ろす望月の顔があり、俺は自分が床に倒れているのを知る。
起き上がり辺りを見ると、そこは望月が寝床にしていた居間だった。
正面を見ると壁があり、ここから危険地帯と化したキッチンから脱出したらしい。
そういえば壁の向こう側はキッチンだったな。

「俺、壁の中を通り抜けて来たのか?」

霊体でなければ出来ない事を体験したと今頃、実感した俺は信じられないと壁を触る。
それに頷き、望月は事情を説明した。

「異様な気配を感じて部屋を出ようとしたんですが閉じ込められてしまって…迷っていたら壁の向こう側から、北川さんのオーラを感じてテレパシーを送って見たんです」

「へぇ〜、テレパシーなんて出来るのか」

望月の持つ能力のひとつだろうか?
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