悲愴と憎悪の人喰い屋敷
俺が感心して言うと望月は笑う。

「そんな能力なんてありませんよ」

「え?」

「北川さんの能力を信じて願っただけです」

なるほど、だから助かった時に『本物ですね』と言ったのか。
納得していると望月の顔は次第に暗い顔になる。

「また犠牲者が一人増えました。僕がもっと注意していれば…!!」

望月は言葉をそこで止め、いきなり俺の手を引いた。

「わっ!?何だよ?いきなり……え?」


奇妙な音が聞こえた方に目を向けると、さっきまで俺がいた足元に黒い水溜まりのようなものが発生していた。
望月が手を引いていなければ間違いなく飲み込まれていただろう。

「僕から離れないで下さい。符術!」

素早く望月が懐から札を出して呪文を唱えると、俺達の周りに金色の光が発生し消える。

「うわっ!」

次の瞬間、目の前に黒い物体が飛び貼りついた。
目には見えないが望月の張った透明なものが俺達を包んでいるようだ。

「も、望月!一体何が起きたんだよ?」

飛び交ってくる無数の黒い物体を一瞥して聞くと、望月は息を切らし俺の傷口を見て言う。

「多分…北川さんの…血です。その血を求めて、支配者が躍起になっているんです……くっ!」

「お、おいっ!大丈夫か?」

「平気…です」

いや、顔が真っ青で全然平気に見えないぞ。
札を持つ手も微かに震えているし。
不安な気持ちが顔に出てしまっていたのか、望月は苦笑して告げる。

「支配者…悪魔は取り込んだ人間の血…霊能者達の血で能力を得ているみたいです」

それじゃ、望月は今その霊能者達全ての力と戦っていると言うことなのか?
くっ!そんなに俺の血が欲しいのかよ!
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