Crazy Love
「う、嘘なんて……」

「聞いたよ。カズくんから」

彼女の表情が、見る見るこわばって行く。

「カズって? 弟に会ったの?」

「うん。偶然渋谷で……達也くんを今日預かってもらえるように頼んだのも俺なんだ」

「達也って? 名前も……」

「知ってる」

芹の顔から、サーッと血の気が引いていくのが見て取れた。

動揺して震えだした手を、俺に気付かれまいとさり気なく机の下におろして、彼女は落ち着かない様子で手元に目線を落とした。

「今まで、あなた一人に苦労させてごめん」

俺はそう言い頭を下げた。気持ちを言葉にしたら、一気に色々な想いが込み上げてきて、少し声が震えた。

この3年半の間、色々あったけれど、結局俺は新しい彼女作って、楽しく暮らしていた。その間、芹が俺の何倍も傷つき、悲しんでいたのかも知らずに……
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