さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「レイラ様?どうかなさいましたか?」
「ごめんなさい。もう充分です。部屋に戻ります」
今進んできたばかりの道を、隠れるようにして戻る。
・・何動揺してるんだろう、私。
初めて知る胸の痛みは、ちくちくと棘が刺さったようで、
それは一日中レイラを苦しめ続けた。
夜になってもレイラは暗い気分のまま寝台に入った。
頭から毛布を被る。
目を閉じても、瞼の裏に昼間の楽しそうな侍女の笑顔が映る。
耳をふさいでも、鼓膜の中で二人の弾む声がこだました。
・・お姉ちゃんがいれば、話を聞いてもらえるのにな。
困った時は、カマラに相談するのが常だった。
どんなにくだらないことでも、カマラはレイラの話を粘り強く聞き、
最も的確な助言を与えてくれた。
母親のように。