さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
どれくらい時間が経ったのか。
レイラは少しも重くならない瞼を恨みながら、天井を見つめていた。
ふいに、闇の空間に銀色の糸が姿を見せた。
それは蜘蛛の糸が雨上がりに輝きを放つように、
黒い背景に美しく映える。
レイラは寝台に体を横たえたまま、ぼんやりとそれを眺めていたが、
次の瞬間、ひっと息を吸い込んで悲鳴を上げるところだった。
すんでのところでそれを止めたのは、大きな右の掌。
「静かに」
サジはレイラの口を押さえたまま、周囲の様子を窺う。
「サジさん!びっくりした。
一体どうやって部屋に入ってきたの?」
驚いて飛び上がった心臓が、近すぎるサジとの距離にさらに収縮を早める。
「隠し扉がある」