さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ソリャンがついた、周囲にも聞こえるほどの大きなため息で、
レイラは我に返った。
「サジの言うことが本当なら、侵入者は扉から堂々と入ったということになる」
ソリャンの独り言のような言葉に、サジは、はいと返事をする。
「すまないが、ちょっと用を思い出した。
レイラ、悪いが先に失礼するよ」
二人のやり取りはどこか他人事に思えて、
突然出てきた自分の名前に、レイラはうろたえた。
「は、はい!」
上擦った声を不安だと勘違いしたのだろう。
ソリャンはレイラの膝に置かれた手に、両手を重ねた。
中腰で上から降るように近づいたソリャンの体で、
レイラはすっぽり影に覆われる。
「レイラ。君を襲った女は必ず捕まえる。
だから、心配しないで」
レイラは頷き、地面の緑を目にしたまま、去っていくソリャンの足音を聞いていた。
一刻も早くソリャンの大きな瞳から逃れたい。
そんな気がしたが、その理由はわからなかった。