さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
望みの答えを返さないサジに、レイラの顔が剣を孕む。
サジは笑顔で近づいてくると、窮屈そうに体を折り曲げ、
その耳元に小さく息を吹きかけた。
「あとで話す」
瞬時に体中が熱くなった。
最高級の宝玉のように、一分のすきもない完璧な笑顔。
飛び跳ねる鼓動を抑えることができず、レイラは再び俯いた。
こんな優しそうなサジの顔を初めて見た、と思いながらも、
すぐにそれが幻なのだと悟る。
・・勘違いしちゃだめだ。皆がいるから私をお姫様として扱ってるんだもの。
近頃の自分は、どうも気分の上下動が激しい。
家族を失ったせいで心が不安定になっているせいだろうか。
あるいは理由もわからず襲われたのだから、仕方のないことなのかもしれない。
レイラは運ばれてきたばかりの時と大差ない料理を眺めながら、
手を伸ばせないまま黙り込んだ。
鮮やかな緑の地面に描かれた小さな影が次第に長くなり、
あたりが夕闇に包まれても、レイラはそこから動けなかった。