さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
2人だけになったのが初めてでもないのに、
レイラはそわそわと落ち着かない。
左胸に手を置いてみる。
この妙なもやもやの正体はなんなのだろう。
実際に痛みを感じているわけでもないのに、
きゅっと締め付けられるような感覚。
「今日、姿を見せなかった侍女はいるか」
いつの間にかサジが立ち上がり、自分を見下ろしている。
灰色がかった不思議な蒼い目で。
胸の鼓動が急激に速さを増す。
その衝撃が自分の手にはっきりと伝わってきて、レイラは胸元の衣を握り締めた。
「姿を見せなかった?」
「そうだ。毎日きちんと仕事をしていたのに、理由も告げず来なくなった者だ」
「そう言われれば、今日はハスナという侍女が昼あたりからいなくなったけれど」
自分の気持ちを追求せずにすんだという安心感を得たものの、
レイラにはサジの考えがさっぱりわからなかった。