さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
サジの話はいちいちもっともで、自分にもわかる。
「でも、どうしてハスナがそんなことを?」
ハスナを庇ったわけではないが、
身近にそんな事をする人間がいるなんて信じられない。
いや、信じたくなかった。
「それは、ハスナの背後で命令してるやつに訊くしかないだろうが、
おそらくは・・・」
「おそらくは?」
サジは言葉を繰ろうとして、唇を動かしたが、音を発することはしない。
まるで自分が口を滑らしたのがまずかったというように、
左手で額を覆うと、何もない空間を見つめた。
「なんでもない。まだ仮定の段階だ」
到達間際で再び霧に包まれた気がして、
レイラはすぼんでいく会話を何とか掘り起こそうと言葉をつむぐ。
「命令って、ハスナ一人の話ではないの?」
「ハスナに恨まれるようなことでもしでかした覚えがあるのか?」
不意にサジの透き通るような瞳に射抜かれて、レイラは体を固くした。