さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「え、それはないけど」
動揺を悟られないように、平静を装って答える。
実際、ハスナだけでなく他の誰にだって恨まれる覚えなどない。
この城に来てから、小さなねずみのように息を潜めて暮らしていたのだ。
「なら、個人的に君を殺しにくることはありえないな。
ソリャン王子に恨みがあったとしても、わざわざ危険を冒して君を殺すほどの利点がない。
仮に女の恐ろしい嫉妬心からだとしたら、他の大勢の妃たちが無事なことがおかしいし、
第一部屋への通路を知っていることの説明がつかない」
レイラの質問を予想していたわけではなく、
サジ自身も何度も暗殺者の動機を思い描いたのだろう。
よどみなくすらすらと出てくる言葉に、レイラは何の反論もできなかった。
「ジマールへの恨みということも考えたが、それなら城に入る前に襲う方がたやすい」
私たちのようにね、とサジはにこりともせず言葉を置いた。
・・そっか。そういえば、私はもともとお父さんたちを助けたくてジマールと取引したのよね。
それを途中で襲われて。