さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
おそらく街へ入るのに厳しい検査を課せられるようになったのは、
自分たちが街を出たすぐ後のことなのだろう。
カマラはまだ子どもで、王族でもなければ城の内部に通じているわけがない。
となれば、当然秘密の通路を知っている誰かから聞いたはずで、
その誰かとは、カマラに秘密を打ち明けるほど親しい間柄だといえる。
「何もしゃべる気はないわよ」
何もかも見通されているのかもしれない。
だが、これ以上踏み込まれるわけにはいかなかった。
「何も、ってことは、他にも色々隠していることがあるってことだ」
カマラは、うっと唸って口を閉じた。
下手にしゃべると墓穴を掘ることになりそうだ。
「カマラ。俺が信用できないのはわかる。
けど、いざって時に知らなくて最悪の事態になったらお互いに困るんじゃないかな。
そう、例えば」
覗いていたユーリの白い歯が、ふっと唇に覆い隠された。
「王の子どもをさらった人物に心当たりがある、とか」
カマラは、体全体が、大きく打ち付けられたような気がした。