さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ここで殺されるのかしら、とレイラは思った。
死ぬのは怖いが、待っている人もいない。
そう考えると、抵抗する気にもなれなかった。
ごちゃごちゃと雑音が響く中、ハスナの腕を見たのは単なる偶然だった。
・・あれは、私がつけた爪の跡?
剣を握り伸びきった腕の衣がわずかにめくれ、手首があらわになっている。
包帯が巻かれているが、完全に傷を隠しきれなかったのだろう。
ちょうど手の甲の下側、三分の一ほどから皮膚がはがれたような引っ掻き傷が見える。
『悪かった』
不意に、頭の奥深いところから、サジの言葉が光の渦のようにはじけ飛んだ。
・・この人たちが、サジを殺そうとしている事を知らせなくちゃ。
さっきからの話では、彼らが待っていたのは自分ではなくサジなのだ。
レイラはまだ結論を出せずに議論しているハスナを、そっと見上げた。