さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ナリは若い二人のやりとりには慣れていたものの、
この場で喧嘩でも始めるのではないかと危惧した。
口を挟むべきか逡巡していると、サジが沈黙を破った。
「隠し通路からレイラを追う。急がなければ城を出てしまう」
「ちょっと待てよ、サジ。レイラは道を知っているのか?」
ユーリは早口のサジに比べ、幾分ゆるやかな声を出す。
「一度聞かれたから、教えた。地下室へ出る道だ。
ここは単純な構造だ。簡単に出口にたどり着く。それより急げ!」
ユーリの肩にサジがせかすように手をおく。
その手をがっしりと掴むと、ユーリは、慌てるな、と低く制した。
「寝台は冷たくなっているから、ずいぶん前に出たのは確かだろう。
けど、俺たちは下から隠し通路を上ってきたんだぜ?
出口っていうのがどこのことか知らないが、
少なくともここへ来るまでに誰とも会っていない」
サジの光彩がひときわ大きくなる。