さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
閉まっていたはずの扉から、冷やりとした外気が流れこんだ。
と、同時にレイラの目が大きく見開かれる。
勢いよく立ち上がると、長いすがギッと嫌な音を出して動いた。
一歩あとずさりし、すがるようにソリャンを見たが、
背を向けたまま、扉に目を向けている。
「今度はしくじるなよ」
「はい、申し訳ございません」
ハスナはしなやかに部屋へ滑りこんだ。
美しく流れるようなその動きは、まるで猫のようだ。
後ろ手に静かに扉を閉め、ソリャンに軽く会釈すると、レイラを見すえた。
逃げられた獲物に対する怒りと、次は逃さぬという気迫がうかがいしれる。
「どうして・・・」
ソリャンがハスナの仲間である現実を、目の当たりにしたにもかかわらず、
レイラの心は理解を拒否した。
何か理由があるのだ。
そう。例えば、ジウチの命令で仕方なくとか・・・。