さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
だが、続いたソリャンの台詞は、その小さな望みを完全に打ち砕いた。
「あのさ、今更いい子のふりをしなくてもいいよ。
ここからは、本音で話し合わないかい?」
ゆっくりと振り返ったソリャンの顔を、炎が優しく照らす。
その完璧なまでの微笑は、今までとなんら変わることはない。
だがレイラは、初めてその笑みを恐ろしいと感じた。
心から。
「君だって、わかってるから城へやって来たんだろう?
自分が本物だって」
「本物?」
何を言い出すのか。
それでなくても衝撃を受けたレイラの頭に、その言葉は更なる混乱を招いた。
ソリャンは今にも鼻歌を歌いだしそうなほど、軽やかな足取りでレイラに近寄る。
と、その整った形の唇が、信じがたい言葉をつむいだ。
「僕の妹だってことだよ。腹違いのね」