さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
手塩にかけて育てた“娘”に責められるのは、
身を切られるようにつらく思えた。
レイラが息を吸う気配に、
非難の声を覚悟して、ミゲルは目を閉じた。
『助けてくれてありがとう。お父さん!』
ふわり、と好い匂いがした。
温かみのある、人肌。
予想外に首もとへかけられた心地よい体重に、
ミゲルの両目から、はらはらと涙が伝い落ちた。
『愛してるわ』
『・・・あぁ。私もお前を愛しているよ。
お前と、カマラを。私の娘たちを』
脇でその光景を見ていたカマラは、思わず駆け寄り二人の肩を抱きしめた。
そうして三人でひとしきり泣いた数日後、
ミゲルはレガ国へと旅立ったのだった--。