さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
水が染み出るように、誰もいないはずの柱から人影がじわりとにじみ出た。
「お、お父さん!!」
ありえない展開に、レイラは今度こそ腰を抜かしそうだった。
小奇麗な衣に身を包み、髪までもきれいに整えられている。
城にいるのに、まるで違和感がない立派な人物。
どちら様ですか、と問おうかと思うくらい自分の知る父とは雲泥の差だが、
それは間違いなくミゲルだ。
「どうしてここにいるの?王様とお知り合いなの?」
ミゲルが苦笑しながら三人に近づくと、サジが突然膝を折った。
「レイラとの結婚を望んでおります。
どうぞ、お許しください」
もうすでに、抜かすだけの腰もない。
レイラの頬が、雷よりも早く真っ赤に変わった。