さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「娘の気持ち次第です。

この子は何と?」


「彼女の方から求婚されました」


“カノジョノ ホウカラ キュウコン サレマシタ”

聞き間違いか、キュウコンって球根のことか、

それとも自分の知らない新たな単語か。

ぐるぐると思考が回るが、一つの結論にしかたどりつかない。


ミゲルとカイルの様子を伺うと、自分と同じような驚きが見て取れる。

どうやら本当にそういう意味らしい。


「ちょっと、サジってば、一体何を言ってるの!

私、求婚した覚えなんかない」


「何を言っている?

さらってくれと言っただろう」


サジは心底不思議そうな顔で答えた。

眉一つ動かさないその表情が不思議そうな顔だと瞬時に理解できたのは、

この数カ月を共に過ごした成果なのだが。


「へ?

いや、確かにそう言ったけど」


それは求婚とは違うのでは。

いや、ひょっとしたらそうなのだろうか。



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