さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ふいに、斜め前方を歩く背の高い銀髪の男が目に入る。
ほっそりとしているが、肩にまでかかる美しい長髪が目を引く。
・・あんな人、いなかったわ。
女の人、じゃないわよね?
兵士の多くは金髪や茶髪をしていたはずだ。
あんなにも目立つ銀髪をした兵士がいれば、覚えているはずだ。
レイラが背中越しにその銀髪をじっと見つめていると、視線に気づいたのかその兵士が振り向いた。
レイラは一瞬体をこわばらせる。
青色に銀灰色を混ぜたような不思議な瞳だ、とレイラはその瞳に吸い込まれそうな気がした。
「何か?」
しかし、男は渋みのあるとがった低い声を出した。
顔だけ見れば女と見間違えそうだったが、声は間違いなく男だ。
「あ、いいえ!なんでもありません!」
レイラはなぜだかひどく胸が騒いだ。
すぐにまた視線が地面と仲良くなる。
鼓動を抑えながら一歩を踏み出すと、自分の差し出した足が、小さな石ころを踏みつけた。
その瞬間、
「きゃあ!」
石が砂利で滑って、その流れに右足を取られた。
足首がおかしな方角に曲がるのを感じる。
レイラは、次に襲ってきた痛みにぎゅっと目を閉じた。