さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
落ち着いた色彩でまとめられているその部屋は、
権力者が富の象徴として飾りたがる一切のものが排除されていた。
ただ一つ、壁に飾られている王家の紋印が入った剣を除けば、
ここが王の部屋であることを忘れてしまうほどだ。
「今頃、お父さんはどうしているのかしら。
お姉ちゃんは、何か聞いている?」
二人だけの気安さから、未来のレガ国王妃であるカマラのことを、
レイラは昔からなじんだ呼び方で呼ぶ。
「わからないわ。でも、きっと元気でいるわよ」
ミゲルが二人の前を去ったのは、二年前のこと。
ちょうどレイラとサジの婚姻の儀式が終わった直後のことだ。
姉の方が先に結婚をすべきだろうという、周囲の計らいで、
カマラとユーリがその前月に結婚し、カマラはレガ国に移住していた。
夜半、突然出ていくと言い出したミゲルは、
引き留める間もなく、元気で、という言葉だけを残し、あっという間に暗闇に消えていった。
自分探しの旅に出たい、という理由が、本心なのかどうかはわからないが、
それ以来、何の便りもない。