さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
目の前にいる男は、眉間に深い皺を刻む。
レイラはひどく叱られるのだろうと思い、
子犬のように丸まった。
腕の中に震える小さな存在をかかえたまま、
男は、立ったまま怪訝な顔をして見下ろしているユーリと視線を交わす。
「レイラ様?」
ユーリが穏やかに話しかけるが、
レイラはごめんなさいとうわごとのように繰り返すばかりだ。
「あやまらなければならないような事がございましたか?」
優しく問いかけると、目を真っ赤にしたレイラがようやく顔を上げた。
「だって、ボロが出てしまったわ。
もしも今のがソリャン王子相手なら、皆、殺されてしまうのでしょう?
“レイラ違い”だとばれれば、
身分を偽った罪も加わると、ジマール様はおっしゃっていたわ」
ユーリの蒼い瞳が大きく見開かれる。
銀髪の男の眉間が、さらに深くほられた。