さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ぽん、と頭の上に乗せられたものが、サジの手だとわかって、
我慢できなくなったレイラは、しゃくりあげながら泣き始めた。
「お、父さん。おねえちゃん。うっえぇ」
包み込むような暖かい熱が、頭のてっぺんからじんわりと体中に広がる。
何の言葉もかけないかわりに、泣き止むまで傍から離れることもしない。
サジの態度は、下手に慰められるより、かえってレイラの心に染みた。
「サジ様。あの、そろそろ出発しないと今日中に城に着けませんが」
遠くで二人の様子を眺めていた兵士の一人が、
おずおずと近づいて、声をかけた。
「あ、ごめんなさい。すぐに行きます」
また自分のせいで予定が遅れたのだと、レイラは涙を拭うことも忘れ、
慌てて立ち上がる。
そのとたん。
「わぁっ!」