さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「レイラ、しゃべったら舌を噛むわよ!
しっかり捕まって、何があっても手を離してはだめ」
カマラの言葉は、切れ味の鋭いナイフのようで、レイラはカマラの背中に腕をまわし、身を縮める。
流れる景色。刺すような風。
カマラに言われるまでもなく、こんな速さで馬に乗ったのは初めてで、
レイラは濁流に飲み込まれた流木のような気持ちで、ただ姉の背にしがみついた。
何もない痩せた土地には、ところどころに木々が生えているものの、
視界は良好で、遠くまで見通せる。
加えて朝日が昇り始めたことで、二人の姿はあらゆる方角から丸見えになった。
「放て!!」
レイラたちの後ろを走る一人の男が馬上から命じると、その声に合わせて、引き絞られた弓が、一斉に解き放たれる。
二人乗りの馬は、後方からの追跡者たちにあっという間に距離を詰められ、
兵士が放った矢の一本が、カマラの左肩を捕らえた。
「ぐっ!!」