さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「サジ様。出発の準備は整っておりますが」
若い兵士が馬車に近づいてきて、サジの背中から声をかける。
あ、という小さい声と共に、兵士はレイラから目をそむけた。
その瞬間、レイラは自分の情けない格好を思い出した。
「きゃあ~!!」
大きな叫び声と同時に、乱暴に扉が閉じられる。
「なんだ?」
いきなり悲鳴を上げたレイラの心理がわからず、サジは頭をひねる。
「申し訳ありません。見るつもりではなかったのですが」
「別に、見たからといってどうなるものでもないだろう」
サジのそっけない台詞に、若い兵士は顔をしかめた。
「相変わらず、女性の繊細な心理には全く興味がなくていらっしゃいますね。
それなのに、女性にもてるサジ様がうらやましいです」
俺なんて一生懸命頑張ってもうまくいかないのに、などとぶつぶつ呟く兵士を、
サジは不思議そうに眺めた。