さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
一瞬にして、その場の空気が氷に閉ざされた世界のように
凍えたものへと変質する。
「その者の首をはねて、ジマールに送りつけておけ」
ジウチの言葉は、つららのごとく尖った刃だ。
レイラは全身が氷付けになったように身じろぎもできず蒼白になった。
足元から崩れ落ちるような感覚に前のめりになると、
震える肩に手が置かれる。
雪が舞い降りたようにふんわりと。
その手の主を見上げると、緑の瞳が大丈夫だよ、と告げていた。
「父上」
ソリャンは、レイラに寄り添うようにして、後ろを振り返った。
「侍女を連れてくることも禁じた上に、護衛の兵士までもあっさり帰したのでは、
彼らとて納得できますまい。
ここは、私に免じて、彼らの滞在をお許しください」