さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
レイラが祈りを終えた頃、
その当事者である彼女の父は、わずかに待遇のよくなった牢の中で、
娘の行方に気をもんでいた。
「お前にも家族がいるだろう。レイラが無事かどうか、それだけでいい。
頼む、教えてもらえないか」
レイラの父ミゲルは、自分を見張っている兵士に毎日熱心に話しかける。
何人かが交代で立つ見張りの中で、
一番自分に年齢が近そうな、壮年の男を選んで。
娘の生い立ちや、日々の出来事など、
多くの思い出話を混ぜ込んで、少しは会話を返すようになっていた。
その日、根負けした兵士は、とうとう口止めされている事実をこっそり打ち明けた。
「心配要らんさ。
お前の娘は今頃贅沢にしつらえた部屋の中で、大事にされているはずだ」
どうせ一生この牢獄から出ることは許されないのだ。
レイラを操る鍵として、死なぬように丁寧に監禁しろと命じられている。