さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「どういうことだ」
他の人間には言うなと念を押し、
ひげの伸びたミゲルの顔に自分の顔を寄せると、
兵士は格子越しに皺の深い乾いた唇を、そっと動かした。
「ソリャン様の妻になったんだよ」
「なんだって!?
ソリャン様って、まさかリア国の王子ではないだろう?」
「その王子様だよ。
本物のレイラ様のかわりに、身代わりとなって城へあがったのさ」
隣にいたカマラは、驚いた。
兵士の話に、ではない。
どんな時も毅然とした態度を貫き、自らが捕縛された時でさえ顔色を変えなかった父が、
今にも倒れそうなほど、色を失っていたからだ。
「父さん?」