特攻のソナタ
待ち続けてもあの人は戻っては来なかった。特攻隊の機上の人となって太平洋の海の藻屑となったことはわかっていた。どうしてもそれを認めることは私にはできなかった。何十年も・・・でももういいのかもしれない。二人っきりの演奏会。・・・あのとき以来、私の心の中では演奏会の幕は閉じていなかった。
「おばあちゃん、はやく帰ろうよ。」
むずがる孫を抱き上げると、私は一つの決心をした。
「あとでアイス買ってあげるね。」
「その後、知覧っていう所に行こうね。」
知覧には特攻隊の遺品や資料が展示されている特攻平和会館があった。私は今までずっとその場所を避けてきた。あの人の死を認めたくなかった。でももういいのかもしれない。年老いた私もやがてあの人のもとへ旅立つのだから。
「おばあちゃん、はやく帰ろうよ。」
むずがる孫を抱き上げると、私は一つの決心をした。
「あとでアイス買ってあげるね。」
「その後、知覧っていう所に行こうね。」
知覧には特攻隊の遺品や資料が展示されている特攻平和会館があった。私は今までずっとその場所を避けてきた。あの人の死を認めたくなかった。でももういいのかもしれない。年老いた私もやがてあの人のもとへ旅立つのだから。