【短】偽りのチョコ
「最低女。この俺様にチョコを渡しておいて、他の野郎とカラオケったぁ良い身分だなぁ…おいっ」

あたしの太ももに、今朝あげたチョコの箱が転がった

あ……軽いっ

チョコの箱はすでに空になっていた

「食べた?」

「金目当てで近づいた割には、諦めが早いんじゃねえの?」

「は? なんで、知って……」

あたしは慌てて、口を押さえた

男子高生はにやっと満足そうにほくそ笑んだ

なんか…むかつく

「勇汰(はやた)様、どちらにお帰りになりますか?」

「親父と兄貴と妹が居ない家にしろ」

「かしこましました」

運転手の男が静かに返事をすると、ウインカーをつけて、右に曲がった

「あんた…いくつ家を持ってんのよ」

「ああ? いくつだっていいだろ。どうせ、俺のモンじゃねえし」

勇汰ってヤツ…あたしが思っていたよりも金持ち息子かも…

性格に難ありって感じだけど

ちょっと読み間違えた

くそ真面目で恋愛ごとに疎くて、女性の色仕掛けには弱いヤツかと思ったのに

なに、この不機嫌極まりない雰囲気といい、偉そうな態度といい……馬鹿お坊ちゃままっしぐらって感じだ

「…で? まずはいくらだ?」

「え?」

「いくら俺様から、むしり取ろうとしたんだよ」

「金目当てじゃないし」

「へえ、俺様が好きなんだぁ」

口の端を持ち上げて、意味有りげな笑みを浮かべた

好きじゃない…けど、金目当てって言われるのもなんか癪に障る
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