HIGH-WEST
(またくっついてるよ。)二階のバルコニーから庭を見ていたニワトリはそう思った。ウマとシマウマのことだ。庭には大きな切り株があり、恋人達の語らいの場となっているのだ。別に語り合ってくれていても構わないのだが、場所が問題なのだ。

…宿舎のバルコニーからまる見え。

(ったく、うっとーしい。)その感情には自身の変に生真面目な性格が大きく関わっていることも彼女は承知している。しかしだ。
 彼女は読んでいた枕草紙をぱたりと閉じると部屋の中のジュゴンに話しかけた。
「バカップルとかけて焼き餅ととく」
いきなりなんやねんと思いつつ、一応ジュゴンは聞く
「その心は?」
「熱々でべったりくっついて離れない」
「座布団一枚持っていって。」

 ウマとシマウマは駆け落ち者らしい。下界にいた頃のことを深く詮索しないということがトランプ内での暗黙の了解となっているので単に噂では、ということになるが、かなりみんな本気で信じている。まあしかし、同じ班に所属しているあの二人はああ見えてけっこう強い。ウマの剣術は基礎がしっかりしているし、それに加えて実戦経験が豊富だ(←虎談)シマウマも女の身ながら剣の腕は相当のものがある。なにより、二人のコンビネーションが抜群なのだ。
 それはともかく、いつもベタベタとくっついているのでかなり顰蹙をかっていることも事実だ。


< 12 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop